N-QUENCH

新しい表面硬化熱処理法、
N-クエンチの実力。

N-クエンチとは?

N-クエンチとは、鋼に窒素のみを浸入・拡散し、オーステナイト状態にさせ、
焼入れを行い、最表面に窒素マルテンサイトを得る「浸窒焼入れ」のことです。

2005年に弊社で独自開発、その後 豊田工業大学との共同研究にて実用化致しましたN-クエンチ処理(弊社商標登録・特許単独出願済) は自動車メーカー・部品メーカーに採用されており、全く新しい熱処理手法の1つとして産業界から注目を集めております。
※N-クエンチは結城高周波の商標登録です。
※(一社)日本熱処理技術協会 「浸窒焼入れの有効利用に関する研究部会」
(活動期間:2014年~2016年 研究部会長:豊田工業大学 奥宮正洋 教授)において弊社開発のN-クエンチ処理が取り上げられました。


商標登録・各種特許

開発当初からのメリットとして以下のように謳われています。

01 窒素を浸入させ焼入を行うことにより、安価なSPCC材でも850HV程度の表面硬度が得られ、 内部に窒素が拡散している範囲で硬度を上昇させることが可能です。

02 浸炭焼入れよりも低い焼入れ温度での処理が可能であるため、浸炭焼入れと比較しても歪み量が遥かに少ない。ガス軟窒化よりも少し曲がる程度

03 処理ガスは窒素+アンモニアのため、雰囲気からの炭素排出源がなく、環境にやさしい処理。

最近では、ステンレス鋼材への適用、浸炭焼入れと同等の有効硬化層深さを有するN-クエンチ処理が社内独自開発され、研究所・メーカーからの試作も増加しております。
社内にて固溶窒素濃度の定量分析も可能であるため、量産化の際のトラブル解決、高度な品質保証が可能となっております。

その他にも、次の特徴を確認しています。

  • カーボン系のガスを利用しないので、処理後の試料の表面粗さが良好です。
  • N-クエンチ処理に必要な時間は、ガス軟窒化の1/3~1/4程度で、大幅な短縮が可能です。
  • 浸炭と同程度の焼戻し軟化抵抗を有します。

特徴

N-クエンチと他の処理方法を比較する実験を実施しました。

断面硬度および窒素濃度プロフィール

●試験条件

使用設備 400kgチャージの真空浸炭窒化炉
供試材 SPCC材
処理温度 750℃~780℃
処理ガス アンモニアガス

●断面組織(鋼種:SPCC)

Fig.1
処理温度 : 750℃ 処理時間 : 30分
約50μmの改質層が確認される

Fig.2
処理温度 : 780℃ 処理時間 : 90分 拡散時間 : 60分
約150μmの改質層と、その下に拡散層が確認される

Fig.1
N-クエンチ試料の硬度・窒素濃度プロフィール

Fig.2
拡散時間を設けたN-クエンチ試料の硬度・窒素濃度プロフィール

Fig.3
浸窒後に浸炭を行った試料の硬度・窒素濃度プロフィール

[Fig.1]の試料では、約0.09mmまで窒素が浸入。安価なSPCC材を用いた場合でも、窒素が浸入している範囲では 焼入硬化によって硬度が素地よりも高くなっています。 また、拡散時間を設けて、より内部まで窒素を浸入させることにより、より内部まで硬化させることも可能です。 それを示すのが、[Fig.2]の試料を使った試験です。 150分間で約0.15mmの有効硬化層深さが得られ、ガス軟窒化処理より短時間で深い硬化層を得ることが可能です。

浸炭窒化の約半分のひずみ量

●比較した処理方法
(1)浸炭窒化焼入 (2)ガス軟窒化 (3)N-クエンチ
●使用した試料
外径:φ127mm、内径:φ86.8mm、厚さ:φ1.6mmで、
内側に歯が切ってある円盤状のSPCC材
●試験方法
各処理方法とも4試料を用い、1試料内で23箇所ずつ測定し、測定値の最大値と最小値をひずみ量としました。

Fig.4
N-クエンチ試料のひずみ量

「浸炭窒化焼入」の処理後の試料は、0.00~0.20mmの範囲のひずみを生じているのに対して、 「N-クエンチ」の場合は-0.05~+0.06mm。 それは「浸炭窒化焼入」の場合の、約半分しかひずみがなく、「ガス軟窒化」と比べても 最大で0.04mm大きいのみです。 「N-クエンチ」は、低ひずみが求められる部品に対する表面硬化法として有用であるといえます。

摩擦・磨耗特性についても優位性を実証

●比較した処理方法
(1)浸炭窒化焼入 (2)ガス軟窒化 (3)N-クエンチ
●使用した試料
外径:φ127mm、内径:φ86.8mm、厚さ:φ1.6mmで、
内側に歯が切ってある円盤状のSPCC材
●試験方法
各処理方法とも4試料を用い、1試料内で23箇所ずつ測定し、測定値の最大値と最小値をひずみ量としました。

Fig.5
N-クエンチ試料の摩擦試験結果

Fig.6
N-クエンチ試料の磨耗試験結果

摩擦実験について
「N-クエンチ材」の摩擦係数と焼きつけ面圧は、「浸炭窒化焼入試料」や「ガス軟窒化試料」と ほぼ同等です。「N-クエンチ」は、部品の代替表面硬化法として有用だと言えます。
摩耗試験について
「N-クエンチ材」の摩耗深さは、「浸炭窒化焼入試料」の約1/2、「ガス軟窒化試料」の約1/3と、 良好な結果を示しました。これによって、摩擦耗性が必要な部品についても、 表面硬化処理の代替として使用可能であることがわかります。 窒素の浸入により焼戻軟化抵抗が向上することが、「N-クエンチ」が良好な摩擦耗性を示す一因です。